俺たちは何度も選択を迫られている。
俺も、古泉も。長門や朝比奈さんやハルヒだって、きっとそうだ。
いつでもその日は一回限りで、やり直しなんてきかないんだってことを本当は誰もがわかっている。
生きていくというのはきっと、そういうことなんだ。
何度でも繰り返したこの夏は、今の俺たちにとってはたった一回限りでしかない。気付いていて何も出来なかった俺たちも気付かずに消えた俺たちも、それでも俺はまったくの別物だなんていいたくはない。
繰り返された594年間は、確かにこの身体にも精神にも何かを残しているだろう。
手を伸ばせなかったのも、逃げたのも、莫迦みたいに溺れたのも、どうしようもなく足掻いて抱え込んだのも、きっと、俺にとってはそのときの精一杯の選択だったんだ。止め処なく落ちてくるように、色んな記憶が俺の中に積もっていく。それを大事に、大事に抱え込めればいいなんて思うんだよ。本当に。
無意識にしろ、なんにしろ、そういうのはきっと、誰にだって存在するといい。
考える暇もないくらいに詰まれた宿題の山を片付けて、もう他のことなんて考えたくもないくらいの頭の中で、俺にはただなす術もなくあいつの存在ばかりが大きい。そのことを何でか、ひどく安堵する。
莫迦で、弱虫で、強がりなくせに不器用なあの男の手を掴んで。だけど目を塞がないで、ずっと一緒に前を見ていられる存在になれればいい。ちょっとくらい巧く立てないときの、支えにくらいはなれるだろ。
明日がやってくる、その瞬間に、あの莫迦のことばかり考えていられることに。俺は少し感謝している。
消えそうなその声で、好きです、なんて。確かにあいつの言葉は、見知らぬ響きで俺の中に落とされている。
ああ、そうだ。
ずっと好きなんだよ、莫迦。