人を異界に誘う音というものがあるなら、きっと花火の音に似ているのだと思います。
仮にこの花火大会へ行かなかったシークエンスがあるとして、僕らはもう何回この音を聞いたのでしょうか。
そしてその度に何を思ったのか......考えても詮無いことですが。

彼は相変わらず飄々とした態で彼女たちにやさしい目を向けていました。
他愛のない話をしながら少し先を行く彼女たちの背をゆっくりと追いかける、それだけの穏やかな時間をどうしてこんなにいとおしく感じるのだろう。

おそらく、花火のせいなのだ、と。彼の横顔から目を離せなかったのも。
心臓にきそうなあの音が好きだ、などと、何気なく呟いたりするから。



次の日記 | 一覧へ戻る | 前の日記