ハゼ釣り大会とのことでしたが、恥ずかしながらハゼという魚をよく知りませんでした。
彼いわく佃煮や天麩羅、から揚げにするとおいしいそうです。
うまく釣りあげられなかった僕に、彼が魚拓を作る役をお任せしてくださいました。
押し付けただけだ、と仰っていましたけど、本当は興味津々の僕に気を遣ってくださったのでしょうね。
釣り上げたハゼを揚げる彼の背中が不意に脳裏にフラッシュバックしたのは、おそらく過去シークエンスのなごりなのでしょう。
僕の家で、テーブルを囲んで、真向かいでほほ笑む彼の表情をもう一度、今度は自分自身の目で見てみたい。
どうして過去の僕が得たものを、いまの僕が手にすることができないのかとふと考えるほどに、それがいかに異常な状況において生まれてきたのかを意識せざるをえない。
それが禁忌であることを僕は知っているはずなのに。
こどものように情けなく泣いている何人もの僕が、彼を否定しようとする僕が、そして彼をいとおしく思う僕が、かき消えそうな残滓のなかで腕を伸ばしていることを知られたくなんかないのに。