嵐がくるらしい。灰色の雲が空を覆っている。
そこから連想される言葉なんて口に出さずとも彼も承知しているだろう。
DVDを借りて帰ってきた彼は、涼宮ハルヒの指示だからという理由でそれを再生させた。荒唐無稽なストーリーが目の上を滑ってゆくだけの時間、床に寝そべった彼の息遣いだけ聞いていた気がする。

身体は動くようになってきた。
それなのに彼は僕を部屋に閉じこめようとする。
まるで僕が回復してしまったらここにいる理由がなくなってしまうとでも考えているように。
いや、たぶんそう思っているに違いない。一度くらい休憩したっていいだろう、と彼が言った。

一瞬なにを口走ったのか意味がわからなかった。彼は自分の発言のおかしさに気づいていないのだろうか? 僕は――知らない。そんなことは。気づいていたのは彼だけなのか? いや、長門有希は知っているのだろう。


そういうことなのか。この異様な既視感は。だから、彼は。


彼がゆっくりと壊れてゆく。
叩きつけられた僕の言葉を飲みこんでわらっている。



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