気づくのがあまりにも遅すぎたんだ。だって、このシークエンスは失敗したと(なぜだかわからないけれど)本能的にわかっているのに、いまさら。どうにもならないまま、何度も夢を見みては目を覚ます。この家の、至る所で、僕は、彼と。
堪らなくなって起き上がる、そのとき、ドアベルが鳴った。
彼に部屋番号を教えた覚えはない。それなのに彼はここにきた。
それが彼も僕と同じ夢を見たのだろうことを示唆している。
手を伸ばすことをためらう僕に、彼が誘いかけてくる。
自分を慰めたその手で僕に触れて名前を呼ぶ。
日に焼けたなめらかな肌の、意外なほどのきめの細かさを、震える背骨の味を知っている。理性がはぎとられる。
あっけないほど簡単に身体はつながった。
その記憶が、彼にどんな影響を与えているのか僕にはわからない。
わからないままに身体を重ねて、なぜかそれだけでひどく心が満たされたような気がして泣きたくなる。言葉にすらしたことのない感情が全身を満たして溺れそうになる。まるで僕をなにかから守ろうとでもするように、彼の腕が僕を抱きしめて、ひどく優しいその感覚になにもかもを投げ出したくなる。きっと、いつかの彼が、僕にそうしたいと願ったのかもしれない。そんなことを思う。
僕らはいずれたどりつくだろう正しい時間軸に向かうための布石にすぎないんだろう(もしかすると、布石ですらないのかも)。でも、それでもそこにはなにかしらの意味があるのだと思いたい。
でなければきっと、こんな感情が生まれることだって。