日記を書くともうそんな日か、と毎日少しだけ驚く。

あと二日だなんて嘘みたいだなと思いながらも今日は夏休みの総括での集合だった。あまりに駆け足で正直、日にち感覚がなくなってはいたんだけどな。それでも俺はきっと積み重ねの中で何かを手に入れていたんだろう。今まで、一万何千回繰り返されたかしれない光景に思わず口からこぼれたのは莫迦みたいな台詞だったんだが。桁違いの眩暈にも似た感覚が襲って、自然と俺の腰を上げさせた。
ああなんで叫ぶ必要があったんだなんてことばかり狭い店内で蹲りたい気分でもあったんだけど、腰に手を当てて何処か不満そうで満足そうな、ハルヒの大声が俺に告げた。そうだ、それでいい。
弾け飛ぶように消えていった何かが、俺に終わりを告げた。それはハルヒの表情ひとつだった気もするんだが。
初めてのケースと、確かに長門はそう言って頷いた。いつでも観察者としての立場を崩せない長門が、それでも聞かれた内容にはいつでもまっすぐに応えることは知っている。硝子みたいなあの眼が、嘘をつけないことだって。きっと。何か言いたいことがあるんじゃないか、なんて聞いたのは理由もない確信めいた何かが俺を支配していたからだ。前のあなたから伝言を、なんて返答が返ってくるとは思いもしなかったがな。何かを、聞かなきゃいけないような気が、ずっとしていたんだ。

少し驚いたみたいな、そんな顔をした長門が何処か泣きそうだったなんて俺の気のせいだろうか。
古泉の部屋に足を踏み入れて、どうしようもなく浮かぶ衝動で咽喉を掻き毟る俺の手をつかんだ長門が語ったのは何処か、お伽噺みたいに知らない世界で、それでいてひどく実感を伴ってもいた話だ。
何度でも、恋に落ちて、そのたびに違う選択をしてきた俺が長門に託したのは言葉以上にずっと大きな感情だったんだろう。まるで坂道を転がり落ちるように現実味を増した感情が、ひどく涙腺を破壊していた。
夢に見たすべてが、少しづつ形になっていく。これは、確かに現実だ。
まだ少しだけ、二日後が怖いけれど、それでもどうやってでも俺は古泉の手を掴むことに決めたのは確かに俺の選択なんだ。伸ばした手が振り払われても、避けられても。この思いを口にできなくても。
並んでいる写真がいい、なんて不意にカメラを向けてきた長門が、俺たちにその写真を寄越したのは、あいつにも何処か過去に残してきた後悔があるんだろうか。


きっと15498回目で、初めての、恋をしている。



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