最終日、というのはあらゆる意味でそうなんだと、そのことに古泉は気付いたんだろうか。
閉鎖空間の発生を告げる筈の携帯電話が壁に叩きつけられていて、思わずぞっと咽喉を鳴らした。
これは俺のエゴ、なのかもしれないとずっと思っている。まるで結界みたいにこの小さな部屋に閉じ込められて求められるままに受け渡して、そのことで本当にお前は救われているのか?と、訊きたいのにそんなことを口にも出せない。
晒されたままの背中に残された傷跡が、戦いのあとじゃなくて、俺はひどく安堵する。
まるで所有格の証、みたいに立てた爪痕はもう残らないのだと知っているんだけど。それでも。
泣き方を忘れている、子供みたいな顔で腕を伸ばしてくる古泉の、支えになれないのだろうか、俺は。強引にでも引き寄せて抱きよせて、もっともっと甘やかして世界から耳を塞いでやればよかったんだろうか。あの、窓の向こうに広がる光景は確かに綺麗なはずなのに。どうしてだろう。

お前を、抱きしめて温めてやれればそれで何かが変わる気がしたのに。
まるで癒すように舌を這わせて、俺はその傷跡を広げている。



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